TCFDフレームワークに基づく情報開示
≪気候変動リスクに対する考え方≫
大紀アルミグループは、「事業」と「環境」を同軸にとらえた G&G<Global & Green>の経営コンセプトのもと、アルミニウムのリサイクルを通じて、社会の発展に貢献するとともに、地球環境保全のための継続的な改善を推進しています。
国内にとどまらず、世界を舞台とするGlobalな視点と活動
地球環境をしっかりと見据えたGreenの理念と実践
2015年の「パリ協定」、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)「1.5℃特別報告書」、2021年のCOP26で採択された「グラスゴー気候合意」を経て、気候変動対応の重要性がますます高まる中、当社グループにおいても、地球環境保全と省資源・省エネルギーへ貢献するという環境方針に基づき、気候変動リスクおよび脱炭素社会への移行に取り組みます。
2022年1月には、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」※1提言への賛同を表明するとともに、「TCFDコンソーシアム」※2へ参加しました。

※1 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD):
Task Force on Climate-related Financial Disclosures。2015年に主要国の中央銀行や金融規制当局が参加する金融安定理事会(FSB)によって設置されたタスクフォース。金融市場の不安定化リスクを低減するため、企業に対し、気候変動がもたらすリスクと機会の財務的影響を把握し、具体的な対応や戦略等を情報開示することを提言。

※2 TCFDコンソーシアム:
TTCFD提言へ賛同する企業や金融機関などが一体となって取組を推進し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組について議論する場として設立。
1.ガバナンス
気候変動リスクを管理する組織として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、その下にTCFD分科会を設け、リスク・機会の抽出、シナリオ分析や財務的影響および対応策を議論する体制を整備しました。TCFD分科会で議論した内容は定期的(原則年1回以上)に取締役会に上程・報告され、取締役会は必要に応じて対策を決議し、監督・指示を行っています。
<気候変動リスクへの対応に係るガバナンス・リスク管理体制>
2.戦略 <シナリオ分析>
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」をとらえ、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、IEA※3やIPCC※4による気候変動シナリオ(2℃未満シナリオおよび4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社グループへの影響を考察し、当社の製品事業(国内)を対象にシナリオ分析を実施しました。
※3 IEA:国際エネルギー機関
※4 IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル
シナリオ | 概 要 |
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2℃未満シナリオ | 今世紀末までの気温上昇を2℃未満に抑えるため、脱炭素社会に向けた大胆な政策や技術革新が進むシナリオ |
4℃シナリオ | 今世紀末までの気温上昇が4℃程度となり、気象災害等が激甚化し、物理的影響が生じるシナリオ |
2.戦略 <リスクと機会が及ぼす影響>
2℃未満シナリオ、4℃シナリオにおいて、事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定しました。
シナリオ | 要因 | リスク/機会 | 当社事業への影響 | インパクト 評価 |
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2℃未満(移行) | スクラップ原料の需要増 | リスク | 調達価格が上昇する | ↓↓↓ (リスク:大) |
カーボンプライシングの導入 | リスク | 国内のScope1・2の排出量に応じて炭素税の支払コストが発生、増加する | ↓↓ (リスク:中) |
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再エネ調達 | リスク | 脱炭素目標の達成に向け、再エネ調達コストが増加する | ↓ (リスク:小) |
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高品位スクラップ原料の需要増 | リスク | スクラップ原料の格上げ工程、(不純物除去・無害化)のためのコストが増加する | ↓↓ (リスク:中) |
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二次合金地金の用途拡大につながる技術革新 | 機会 | 利用対象が広がり、特殊合金の需要が増加し、売上が拡大する | ↑↑ (機会:中) |
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EV市場の拡大 | 機会 | 車体軽量化のためアルミニウム化が進み、アルミニウム二次合金需要が増加し、車体用合金の売上が拡大する | ↑↑ (機会:大) |
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リスク | 内燃機関用アルミニウム二次合金の需要が減少し、売上が縮小する | ↓↓↓ (リスク:大) |
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4°C(物理) | 生産拠点の被災 | リスク | 国内の自社工場が被災することで、製造が停止し操業が困難になり損害が発生する。また、損害保険料の負担が増加する | ↓ (リスク:小) |
2.戦略 <リスクと機会への対応策>
シナリオ分析を通じて特定されたリスクと機会への対応策を、今後、当社グループが注力すべきマテリアリティととらえ、中期経営計画を通じて取り組みを進めていきます。
シナリオ | 要因 | 当社の対応策 |
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2℃未満(移行) | スクラップ原料の需要増 | ・原料サプライチェーン構築によりスクラップ集荷体制を強化する ・主要地城(西日本・九州・北関東など)での集荷拠点を開設する ・地域に根差した集荷による、「回収」から「製品まで」のリサイクルループを確率する |
カーボンプライシングの導入 | ・生産や流造過程における二酸化炭素排出量を削減する | |
再エネ調達 | ・生産過程での更なる再エネ移行を推造する太陽光発電の設置を通じての外部期達コストの抽出費用対効果の高い再生ECOプランの購入 ・新現調達先の開拓など安定した再エネ調達体制を構築する |
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高品位スクラップ原料の需要増 | ・取扱量を増加させ、格上げ工程での原単位コストを削減する | |
二次合金地金の用途拡大につながる技術革新 | ・新塊合金の二次合金化を進めるための研究 ・技術開発を行う ・開発した二次合金について顧客のご要望に応じて設整し製品化する ・国内外の自動車メーカー・バッテリーメーカーへのアプローチとコネクション造りを行う |
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EV市場の拡大 | ・今後、EV分野向けに頭容と提携し、車体用アルミニウム二次合金の研究・技術開発を行う ・国内外の自動車メーカー・バッテリーメーカーへのアプローチとコネタション造りを行う |
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・従来のガソリン車用部品に加えて、新たにEV用部品に対応するアルミニ次合金地金を開発・販売する | ||
4°C(物理) | 生産拠点の被災 | ・被災状況を想定した復旧計画の具体的な策定と継続的な見直し・実践を徹底する ・他拠点での代替生産の体制を強化する |
3.リスク管理
大紀アルミグループでは、気候関連のリスクおよび機会について、サステナビリティ委員会に設置されたTCFD分科会がシナリオ分析を実施しています。また、同分科会において、気候関連リスクに関する分析、対策の立案と推進を行い、その進捗管理を行うプロセスを構築しています。
気候変動リスクを管理するTCFD分科会と、全社的なリスクを統括・管理するリスク管理室は互いに連携し、一元的なリスク管理を行っています。
4.指標と目標
大紀アルミグループでは、中期経営計画において、CO2排出量削減を指標とし、2030年度のCO2排出量を2019年度比25%削減※とする目標を掲げています。
※対象範囲:(株)大紀アルミニウム工業所のScope1・2および3(カテゴリー1・4の主要部分)
2030年トータルCO2排出量削減 2019年度比▲25%
項目 | 主な対策 | 項目毎CO2削減率 | 全体に及ぼすCO2削減率 | |
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生産関係 | 再生重油 | 保持炉リジェネ化・排熱有効利用・生産性向上 | 11.4% | 3.6% |
軽油 | リフト車両のEV化 | 90.0% | 0.7% | |
LPG | トリベ予熱レキュパーナー増設 | 8.1% | 0.1% | |
都市ガス | リジェネ化・排熱有効利用・生産性向上・トリベ予熱レキュ化 | 8.3% | 0.6% | |
電力 | 高効率モーター・太陽光パネル設置・生産性向上 | 12.0% | 0.9% | |
流通関係 | トラック燃料 | 最短流通の整備 | 5.0% | 0.1% |
原料関係 | 新塊※ | 新塊に代わるリサイクル原料の使用率アップ | 40.0% | 19.6% |
※LCA(Life Cycle Assement)の観点から新塊が製造され入手されるまでのCO2排出量は10,000kg-CO2/tであるため原料としての使用を削減すれば大幅にCO2排出量の削減につながる。 | トータル 25.6% |